わたしです

みなてふ(twitter:@mintexcca)のメモ帳みたいなもんです

「東大寺 修二会の声明」フル参戦してきた

東大寺二月堂で毎年三月に行われる法会「東大寺修二会」(お水取り)の、法要の一部を公演という形で披露する「東大寺 修二会の声明」公演。
2週間前の5/13に大阪公演、続く5/20に東京公演が行われた訳ですが、なんとどちらも参戦してきました。
というわけで、その感想をば、つらつら書いていきたく!

そもそも「東大寺修二会」とは、毎年三月(旧暦の二月)に、奈良は東大寺の二月堂で14日間にわたって行われる仏教行事です。
奈良の大仏様が開眼した752年に始まり、以来約1270年間、一年も欠かさずに続けられてきた、言わば現存する最古級の仏教儀礼なんです。これほど古い儀式が人々の伝聞によって長きに渡り守られ残っていることは、海外に目を向けてもなかなか難しいことで、奇跡とも言えるのかもしれません。

さて、この法会は「お松明」の名でもよく知られています。国宝建築たる二月堂の舞台の上で大きな松明が火花を散らしながら動き回る様は、大変エンタメ性が高い訳ですが……
まぁこの松明は行事の本当に一部分に過ぎず、行法の大部分は東大寺二月堂の中で、(特にコロナ禍の昨今は)ほとんど非公開の状態で行われます。外にいれば音は結構聞こえるんですけどね。
そこで今回の公演ですが、そんな行法中の二月堂内陣の様子が、実際の練行衆の方々によって舞台上に再現されます。
普段はなかなか見ることができない、行法中の内陣の様子、練行衆の皆さんの一挙手一投足を見ることができる貴重な機会なんですね。

ということで感想なんですが……
まぁ〜〜眠かったですね!いくら興味があろうとも、やはり6時間という長い時間を暗い空間で、しかもお経を聴きながら過ごす訳ですから、眠くならないわけはないのです。
まぁそれはさておき、やはり以前放送されたNHKの番組などよりも、練行衆のみなさまの動きが手に取るように分かりましたね。
特に東京公演では舞台が回転!見せ場をしっかり見せてくれたのが本当に嬉しかったです。
しっかり火も焚かれてるし、差懸(履き物)や五体投地の音もバンバン鳴らしていて、大変臨場感がありました。よく箱側が許したなぁ〜〜これ……。
特に悔過作法は、初夜→半夜→後夜→晨朝と、夜行う行法を一通りやっていただけたので、その違いが面白かった!
(修二会では、日中、日没、初夜、半夜、後夜、晨朝の6つの行法(六時の行法)を毎日、少しずつ内容を変えつつ繰り返します)
印象的だった一つ目のポイントはテンポ感。声明の内容が時が進むにつれどんどん省略されテンポ感が速くなっていくのは知ってはいたのですが、実際に通しで見るなんてことは今まで無かったので、それがよく分かりました。というか、晨朝の悔過作法とかテンポ早過ぎて笑っちゃった、あんな短いんすね。しっかりと儀礼を行う初夜と対照的に、まさに「瞬く間」という言葉がぴったりな晨朝の様子が面白く映りましたね〜でも、省略された声明の方がなんかキャッチーで、気持ちよく聞こえるんですよね。現代音楽的というか、ほら「南無観」(南無観自在菩薩の略)とか有名で、修二会の代名詞の一つですもんね。
印象的だった二つ目のポイントは、堂司さんの動作ですね。堂司というのは、練行衆の役職のひとつです。堂司さんがあんなに行法中忙しなくしてる、というのは今回初めて知りましたね〜散華の配布とか、行法の準備的な部分は処世界さん(1番新米の役職)がやってるものかと……。しかし、この散華の配布しかり、堂司さんの動作も、初夜から晨朝にかけて、ちょーーーっとずつ違う。これがまた不思議で……同じことやってるのに、違うんですよね。どういう過程でこうなったんだろう……とか、まぁ考え始めても分からないんですけども、その謎さに魅力がありますね。

公演自体の感想は書いててキリがない。なんせボリュームが凄いので……別の話を。

今回は仏教儀式の公演なわけで、まぁなかなかマニアックと言いますか地味と言いますか、やはり興味がない人が見るには限りなくハードルの高い公演です。
一方で、今回タイトルにもなっている「声明」というのは、日本の伝統音楽の源流のひとつ。西洋音楽が宗教音楽に端を発しているという言説に似て、日本の伝統音楽もやはり宗教から始まっている節があります。そんなこんなで、仏教儀礼ではありますが、芸術としての側面もやはりあるなぁ、というのを実感したわけで。
地味で退屈な仏教儀礼と思えばそれまでですが、よく耳を澄ますと、個性的な旋律と律動の声明、差懸を踏み鳴らす音、五体投地の鈍い低音。鈴や法螺貝といった楽器も登場して、普通の音楽では聞けない独特のハーモニーを奏でます。
暗闇の中、炎で金色に照らされる内陣の様子は、見た目としてもとても綺麗。
練行衆たちの所作の一つ一つも、大変綺麗で美しい。(特に佐保山さんの五体投地は圧巻でしたね)
しっかり見てみると、芸術としての完成度の高さに圧倒されてしまいます。しかも、修二会がよく「タイムカプセル」と呼ばれるように、それは1270年前に奏でられた音楽、作られた空間そのものであって、大変なロマンがある。
そうは言ってもやはり興味がないと退屈なものだとは思いますけどねw それでも、いちクリエイターとしてこんな完成度の高い総合芸術を見せられたら、やはり感動……ですし、いち経験としても貴重だなぁと思いました。

やっぱり面白いですわ、仏教……!