わたしです

みなてふ(twitter:@mintexcca)のメモ帳みたいなもんです

千本の足を持つ仏様に会ってきた

先日、一度お目にかかりたかった正妙寺の千手千足観音立像が東京に来ているということで、東京駅近くの東京長浜観音堂に行ってきました。
滋賀県北部、湖北という地域にある長浜市、多くの観音様がおられることで有名なのですが、その観音様が代わる代わるこの東京長浜観音堂に来ているのです。

今回は、そんな千手千足観音様のレポート。
来月27日まで公開しているようなので、気になった方はぜひ訪れてみてください。入場無料です。

異様な像容

誰もがひと目見ただけで特別な印象を受けるであろうインパクトの大きい像容。
仏様への失礼を承知で言いますが、一言で形容するなら「蟹」。
十一の顔を持つので、正確には「十一面千手千足観音」ということになりますね。
足は脇足38本ですから計40本。千手観音も実際には40本の手を持つ作例が多いので、それに倣っているのかもしれません。ちなみに手は36本と足より少なく少し中途半端。

普段は見られない異様な後ろ姿

足が沢山ある仏様と言えば大威徳明王が有名ですが、まぁそもそもなかなかいません。手がたくさんある仏様は多いですが。
足が3本以上ある仏様というだけでも珍しい訳ですから、千本の足を持っているこの仏様がどれだけ特殊かは分かって頂けるかと思います。

どうしても千本の足に目が行ってしまいがちですが、お顔も観音様としては極めて特殊。
どこか笑っているようにも見える忿怒相で、どちらかと言うと明王とか金剛力士とか、そのような顔に近いですね。
写真ではよく分からないかもしれませんが、頭上の11のお顔もすごく面白い顔をしています。

台座も面白い色と造形。少し荒削りな造形は却って親近感があり、お像とのコントラストが強いのが印象的でした。

千本の足

仏像というのは何も面白いからこのような像容になっているのではなく、何か意味があって作られなければいけません。

観音様は十一面観音や千手観音、不空羂索観音如意輪観音といった様々な姿かたちで作られてきました。これは変化観音と呼ばれ、人々の願いが具現化した形です。
以前の記事で仏様を紹介する時に触れましたが、十一面観音や千手観音が11の顔や1000の手を持つ理由は「困っている人々を見逃さないため」「遍く人々を救うため」ですね。

東京長浜観音堂にいらっしゃった学芸員さんの話によると千本の足は「困っている人々にすぐ駆けつけられるように」という意味のようです。11の顔や1000の手を持つ理由と似ていますね、ありがたい仏様なのです。
……まぁ、実際物理的に1000本の足があるからといって速く走れるのかと言われれば甚だ疑問というか、むしろ歩きづらそうですが……しかし間違いなく、人の願いが具現化した形であり、その時の人々の思いが凝縮された像容というわけです。


面白い仏像を紹介させて頂きました。
改めてとなりますが、この仏様は東京駅近くの東京長浜観音堂にて2022年2月27日まで見ることができます。無料です。
昨今のオミクロン株の拡大でどうなるのか分かりませんが、興味があればぜひぜひ、感染対策をしっかりして見に行ってみてはいかがでしょうか?