わたしです

なかさん(twitter:@mintexcca)のメモ帳みたいなもんです

怪作「Ghost of Tsushima」の話

https://image.api.playstation.com/vulcan/img/rnd/202010/0222/IA6du6WqunVxyJmxlCjCNJtG.jpg?w=440

昨年SIEより発売されたPS4ソフト「Ghost of Tsushima」、大変話題になりました。
私も遅ればせながら今年の2月にセールで購入。
ゆっくりプレイし、つい先日クリアしたのですが……
いやはや、とんでもない「怪作」でしたので、クリア直後の新鮮レビューです。

ネタバレはしないように書いているので、ご安心を。

様々な対立を描くストーリー

本作は、九州北方の島「対馬」を舞台に鎌倉時代に起こった元(蒙古)の日本襲来、いわゆる元寇を扱った作品です。
プレイヤーは生き残った対馬の武士「境井仁」となり、対馬対馬の民を救うため奔走します。

ということで、物語の大筋は「日本 vs. 蒙古」の構図ですが……
だからと言って、一致団結して蒙古を討つぞ!なんて王道モノのストーリーではなく。
キャラクターそれぞれに思惑や目的があり、時に同郷同士の対立や裏切りも起こります。
このゲームは日本と蒙古の対立を描くというよりむしろ、蒙古が襲来したことにより変わっていく人やその関係性を克明に描いた作品だと、私は感じました。

特に本作のメインテーマであるのは主人公である境井仁の変化。
「武士道」という日本独自の価値観……作中では「誉れ」という単語が頻出ですが、大凡同義だと思います。
それが、蒙古という圧倒的な異文化と接触することによって、葛藤しながらも崩れ去っていく様が全体を通して描かれます。

元寇」を描くにあたって、単に国同士の争いを描くのではなく、それに翻弄されながら抗う人々とその関係が生々しく描写されることがこのゲームの魅力でしょう。
特に「誉れ」(武士道)という日本独自の思想を、海外のゲームスタジオが完璧に描いている点は本当に凄いです。

爽快剣戟で侍になる

スタッフインタビューでも語られていましたが、本作は「侍になる」ことをコンセプトに作られたようです。
基本的な操作は「弱攻撃」「強攻撃」「ガード(受け流し)」「回避」とシンプルながら、爽快感のある剣戟が楽しめるのが魅力。
また、相手の攻撃を見極めながら慎重に戦わないと攻撃が通らず反撃を受ける……この緊張感もまさに「侍」という感じ。

シンプルすぎる操作だと物足りない……ということもなく。
日本刀以外にも、弓・くないやてつはうと言った暗具も駆使しながら戦うことになります。
また剣技にも「型」があり、戦闘中シームレスに切り替える事ができます。
戦闘に多くの選択肢があるので、基本操作はシンプルだけど、戦闘をより有利に進めるためには頭を使い複雑な操作を行う必要があり、プレイヤースキルの上達も感じられる設計になっています。
ちなみに、ボタン配置はかなり考えられているようで、複雑な事を要求される割に操作は直感的な印象でとても良かったです。

とにかく、まさに「侍になれる」この剣戟・操作、体験してほしい……私はかなりハマりました。

仏教描写に注目

本作は美しい自然描写が取り沙汰されがちで、実際素晴らしいです。
浮世絵のような、日本よりも日本らしい風景描写は本当に美しい……。

ただ私は風景描写としての「寺」に注目してほしいです。
現実の対馬は神社が多く、寺はあまり無いのですが……本作には黄金寺や櫛寺、城岳寺など立派な寺が多く登場し、ストーリー上重要な場所になることも多いです。
寺は神社と異なり仏像を本尊として祀っていますから、日本を描写するにあたって画として説得力があり美しいですし、信仰を描くにも分かりやすい……のかもしれません。(想像です)
作中では時に仏像を尊い信仰の対象として、また歴史的価値の高い美術品として丁寧に扱われ、強い配慮が感じられるのがとても良かったです。

本作中の寺の多くが金堂・講堂・塔から成る立派な伽藍を備えていて、まさにフィクションだからこその浪漫。
祀られている仏像も寺によって様々で、適当に配置されている訳ではない印象。
さらに、赤島の村には奈良・興福寺の天燈鬼・龍燈鬼立像、城岳寺には京都・三十三間堂に似た千手観音立像、青海寺には茨城・牛久大仏など……日本各地の名仏像が集合する激アツ展開

まぁ、ここまで立派な伽藍でありながら回廊が無かったり、対馬が繁栄した時代と比較して伽藍配置が古めな気がする……堂内の仏具配置などの配置も含め細かい違和感は感じますが……
海外のゲームスタジオがここまで徹底して日本の寺院を調べ取材し、丁寧に扱い描いているという事がとても嬉しいですよね。

展開は一本道

本作はオープンワールドのゲームですが、ストーリーは一本道であり、その点で自由度は低め
フィールドも風景自体は美しいですが……似たような景色が多い事は否めないですし、探索の面白さは今ひとつかなと感じました。
ストーリー自体はとても面白かったのですが、プレイスタイルとしてストーリーを追っていくだけになってしまったので、オープンワールドの良さが活かされてるのかと言われると、そうでもないのかな、という印象でした。
(まぁ、私があまりオープンワールドゲームをやらないというのもあるかもです。)

武士道を進むか、武士道を外れるかというのもプレイヤーが選べるとより面白いかなとも思ったり……
いやしかし、本作はやはり武士道を外れていく武士を描きたい作品だと思うので、このままでも良いのかも。

ゲームをサクサク進めてストーリーを楽しみたい人にはオススメできるゲームですが、とことん寄り道が好き!というタイプの人には少し物足りないゲームではあるかもしれません。

海外が放つ、日本より日本らしい日本

どこかのゲームクリエイターさんがインタビューで、
「このゲームは日本のゲームメーカーが作りたかったし、作るべきだった」
と答えていたのが強く印象に残っています。

でも、海外の人が作ったものだからこそ、日本の文化が日本人が見るよりもより特異的かつ面白く映り、このような面白いゲームが作れたんじゃないかなぁ、とも思います。

そもそも、今の日本のゲーム会社にこんな大作ゲームを作る余力はもはや残ってないんじゃないか……とも思うと少し寂しいですね。