わたしです

みなてふ(twitter:@mintexcca)のメモ帳みたいなもんです

「すずめの戸締まり」を見てきた、感想とかネタバレとか

https://www.fashion-press.net/img/movies/24179/njc.jpg

新海誠監督最新作「すずめの戸締まり」昨日早速見てきました。
本当は先週行った岩手旅行のレポートでも書こうかなと思っておりましたが、それは来週以降に持ち越しで……

それにしても、映画館行ったら人は無限にいるし一日26回くらい上映してるしで横転しましたね。
新海誠ブランドというのはあれど、それを抜きにしてもそれだけ人が入る良い作品だったなと思うところもあり。
という訳で、感想を書いて今週はお茶を濁します。
ゴリゴリネタバレなので注意。

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いやー、泣きましたね。
TLでみんな泣く泣く言ってたので絶対泣かないぞと逆張りしてたけど、うーん少し悔しいです。

でも、感動で泣いたって感覚ではなかったです。もちろん、感動もあったのでしょうが……
1番泣いたのは鈴芽が常世で土地の人の声を聞くシーンだったし、震災で被災した人たちの境遇を思っての辛さやしんどさ、それを悼む気持ち、そういう共感性の涙だった気がします。
また、東京の空をミミズが覆い、大地震が起こらんとするシーンは本当にゾワゾワしました…… 災厄や死に対する恐怖や悲しみを再認識することで、感情が大きく揺さぶられたような気がしました。
そして何より(当時大きな被害を受けなかった私でさえ)発生してから11年も経った東日本大震災が、まだ泣くほどしんどく感じるくらい脳裏に刻まれてるのかぁ〜という衝撃がありましたね。僕でもこんなだったので、震災で辛い思いをした被災者の方々がこの作品を見るのは、相当ハードルの高いことかなとは思います。震災や被災者に対する踏み込んだ描写やセリフも多く、新海誠の本気を感じました。
でも個人的には嫌な感じはなく……むしろそういう感情の昂り駆動でずーっと見入ってしまったし、2時間が短く感じましたね。重いテーマの作品ではあれど、ちゃんとエンタメしてた。
もう11年も経ってるし……東日本大震災を殆ど覚えていない世代もこの映画を見るんだろう、全然作品の受け止め方が違うんだろうなぁなどと思うところです。

感動ももちろんあって、鈴芽と環の関係性の変化も良いし、常世で鈴芽が子供の頃の鈴芽と会うシーンも良かったし、とは思うんですが、無難だったという感もなくはないし、物語的な山場はたくさんありましたけど、終わり方は劇的ではなかったし……やっぱり感動で泣いたって感じはなかったかな〜と今思えば。
でも、それがむしろ良かったんじゃないかとも思うところがあり。フィクションだしファンタジーだしアニメーション作品だし、もっとメチャクチャで劇的な展開にもできたとは思うんですけど、震災を扱う作品としてそう在るべきではなかったんだなぁと思います。
そういう無難さやある種あっさりした終わり方が作品のリアリティーを高めていて、共感度の高い「悼む作品」になってる感じ……。
デリケートなテーマの扱い方としてとても良かったと思います。震災自体が持つ(物語的な)インパクトがそもそも、とても大きいですからね。
また、そういう面で多くの人に分かりやすい映画だったな〜と思う反面、キャラクターの感情描写は結構分かりづらいところもあったかなと思いました。
ダイジンが勘違いに気づいて要石に戻るのも、サービスエリアで鈴芽と環がお互いの隠していた感情をぶつけ合うのも、あとから考えればあーそういうことねと思う反面、見ていた時は少し唐突感があったというか……
小説版だと、鈴芽が環に対して重さを感じていることとか、序盤からそこそこ分かりやすく描写されてるんですよね。自分が鈍感なだけか……?まぁ、唐突感があるからこそ、あのサービスエリアのシーンはインパクトがあるのかも。
ダイジンの内面はもう少し分かりやすく描かないと「なんでダイジンはまた要石に戻ったの?」という疑問は容易に持たれるんじゃないかな……いやでも、ダイジンもそういうところ分かりづらいキャラクターだしな……。

キャラクターの話しましょう。
主人公の岩戸鈴芽……あーーーめちゃくちゃ好き。新海誠はオタクが好きそうなキャラを作るのがうますぎる。
君の名は、天気の子と違って、ゲームの女性主人公みたいな感じで良かったですね。一人で生きていく強さがある女の子というか。ポニテ好き。
新海誠作品特有の気持ち悪さがなくて、万人受けする良ヒロインだったんじゃないかなぁ。
どちらかというと草太の方がヒロイン(女役?)みたいな感もあったし、新海誠の性癖が男キャラに向けられているという指摘は正しい気がします。そうそう、TwitterではBL的な側面を指摘されているオタクさん方が沢山いらっしゃいますが、我々みたいなBLアンテナ弱い人間には全く気にならなかったので、そういう塩梅も上手いんだなぁ〜と思いましたね。
そういえば、もちろん鈴芽と草太のガールミーツボーイの側面はありますが、それよりも震災孤児である鈴芽自身の成長に重点が置かれてたの、好きポイントでしたね〜。きっと鈴芽と同じような境遇だった子供って、実際にたくさんいたんだと思うんですよね。そういう子たちが震災から十数年を経てしっかり成長してるという良さが……(お話自体はフィクションですが……)まぁ鈴芽自身は死が怖くないとか、生と死は運次第とか、ちょっと覚悟決まりすぎな気はしますがw
君の名はや天気の子は、ボーイミーツガール自体を原動力として物語が駆動していた感じがあったので、新海誠作品としては新鮮さもあり良かったです。

あとは音楽、今回もRADWIMPSとのタッグでしたが、やっぱいいですね〜「心の臓」とか「両の腕」とか言っちゃうし、歌詞にも曲にも野田洋次郎の手癖メチャクチャ出ててちょっと笑っちゃったけど。
特に「すずめ」のイントロは、民俗学的な側面が強い本作の印象を強烈に決定づけてたなぁと思います。まさに「主題歌」という感じ。
音楽演出でいえば、君の名は、天気の子と比べて音楽の推しが強くなかったのが新鮮でしたね。ミュージカル的な使い方をしなかったというか。
その分、ED曲の印象がより強くて良かった〜、どっちが良い悪いという訳ではないですけどね。天気の子の「愛にできることはまだあるかい?」とか効果的だったなぁと思うし……ただ、新海誠が新しいことにチャレンジしてるんだなぁ、新たな作風を模索してるんだなぁということが、音楽も含めてあらゆる側面から伝わってきた感じがしました。

色々書いてきたのですが、個人的には新海誠作品で1番良かったかな……扱ってるテーマがテーマなので、素直に色々な人に刺さる(面白いと感じるかどうか別として)作品だったんじゃないかなぁと思い、そういう点で「新海誠作品の集大成」と謳われてるのかなと思いました。
震災の記憶が呼び起こされ、死の恐怖を再認識させられ、本当に感情を揺さぶられたし、震災がこんなにも自分の脳裏に深く刻み込まれているのかという衝撃もあり……現実の記憶とリンクすることで本当に強い印象に残る作品だったなと、それでいてちゃんとエンタメ作品として面白くて嫌な感じじゃないっていうのが良かったです。

https://pbs.twimg.com/media/FhWGthNUAAA28UZ?format=jpg&name=large

そういえば入場者特典「新海誠本」も全部読みましたが、あれはもう「答え合わせ本」でしたね。普通のフィクションだったら作者が意図や解釈を書いたら萎えるけど、やっぱりお話自体は素直な話だったし大体想像通りだったのでそういう感じはしなかったです。むしろ「まんまと意図通りにしてやられたな」という気持ち。
それにしても、企画書段階の作品の軸がしっかり完成まで引き継がれてるし、3年の間ブレずに作り続けられるクリエイター的な強度が凄い。いや、3年ってこのレベルの作品作るには短すぎる気もするけど…………。